神崎美柚の小説置き場。

新しいスマホにやっと慣れてきました……投稿頑張ります

《歪な》運命 第14.5話「人形造り」side.ヘンリー

「師匠、お手紙です」「見せてくれ」「はい」 弟子のシェリルから手渡された手紙は上質な紙を使用していた。それも、魔力値が高い古代魔女が愛用していた紙だ。かなり高度な魔法を使用しても耐えれるようになっており、手紙を一瞬で届ける際に役立っていた。…

《歪な》運命 第14話「未解決事件」side.アキナ

未だに特定ができていない誘拐事件や殺人事件の犯人を機関に探してほしい、と王国治安維持部隊の隊長が直々にお願いしに来た。私は驚いた。 「まさか、魔女の仕業だと? 」「そんな、まさか! 捜査がこれ以上長引けば、貴族間での争いが激しくなる為仕方なく…

《歪な》運命 第13.5話「彼女という存在」

彼女が意識を切ったことを確認し、私は目覚める。 私が生前から愛していた殺人。それは、私が入っている体の持ち主である彼女が激昂したり、眠るなどして意識を切った際に行われる。そう、意識を切った後私が入るのだ。 「こんばんは」 宿屋を出た後、誰かに…

《歪な》運命 第13話「旅路」side.ユイ

夏期休暇を利用して私は国中を巡る旅に出ることにした。連続殺人事件の不安感から多くの貴族が別荘へと行っているというのもあり、私も外に出よう、と考えたのだ。本来ならいつものあの別荘に行くが、今年は何の気まぐれか両親が長いことそこに滞在するらし…

《歪な》運命 第12.5話「ウソとホント」side.ユイ

テストなんてくだらない、と私は思った。だけれども、受けなければ私のお父様の名誉は丸潰れだろう。そのこともあり、仕方ないから受けた。 それに、私は学年一位だ。学院に貢ぐお金も、成績も。 二日目が終わり、私は門限まで王国の図書館に入り浸ろうと考…

《歪な》運命 第12話「テスト──貴族クラスの場合」side.エリザ

私の父親は金の亡者だ。だからこそ、私はあまり好んではいない。しかし、幼い頃、病に倒れた母親はか弱かったけれども、私に寄り添ってくれていた。 今、目の前にいるマスターもそうだ。 「お嬢様にテストで目立つなと旦那様が忠告なされたのですか? 」「え…

《歪な》運命 第11.5話「優しい悪魔」side.セナ

『セナ、マナ。今からお母さん、大切なお話をするから、しっかり聞いてね』『うん』『分かった』『いい子ね、二人共。──二人の魔力特性が分かったらしいの』『まりょく? 』『とくせー? 』『魔法には様々な種類があるのだけれども、あなた達が使うのに一番…

《歪な》運命 11話「テスト──下位クラスの場合」side.ミシェル

メアリーとセナがなぜか仲良くなり、私は困惑していた。だけれども、マリアの側に行くために黙々と勉強しなければいけなかったからどちらも無視していた。 クラスで浮いても構わなかった。上位クラスに上がれなければ、実力主義のこの国でも祖母を知るものが…

《歪な》運命 10.5話「憔悴」side.ルシュ

ここ1ヶ月でエリーの態度が完全に友達のものではなくなった。一応幼なじみなので面倒を見てやっているという具合だ。(同じ町の知り合いがほとんどいないせいもあるが) 俺はテストがほとんどダメだった。人生で初めて、テスト中に、頭が真っ白になった。あと…

《歪な》運命 第10話「テスト──上位クラスの場合」

あっという間にテストの日が来た。ペーパーテストのみを6月の初旬に2日間に分けて行い、そのあとから約一か月、実技のテストを行うのだとか。余程遊び呆けてない限り2週間で実技も終わるでしょう、と先生は笑顔で言った。 多くの生徒が真剣に先生の言葉を聞…

《歪な》運命 第9.5話「イツワリ」

私は今日、久しぶりに夢を見た。 私と両親。三人で幸せそうに暮らす、暖かい夢。ありえもしない夢。 なぜこんな夢を見たのだろうか。私は愛に飢えてなどいないのに。 今日はナーシャの一か月忌。エリザからお墓参りに誘われた。だから行くことにした。 「も…

《歪な》運命 第9話「無知」side.ノア

私はいつものようにマスターこと、我が家の私専属執事の所にいた。個人的なことなので今日は個室だ。 「お嬢様。まさかナーシャお嬢様の件で? 」「ええ、そうよ。まさかまだ魔法について無知な頃から事件が起きるだなんて思わないじゃないの。私だってあま…

《歪な》運命 第8.5話「商人を統べる者」

家に戻ると、恋人はいなかった。時計を見ると出かけている時間帯だというのが分かった。 彼女も機関の軍部の人間。なので人付き合いはかなり豊富で、私と休みが被らない休みの日は同じ軍部所属の親友と出掛けるのが常だ。今日は私が出かけたので都合のついた…

《歪な》運命 第8話「複雑」sideメアリー

4月に二人も死んでしまい、次は誰が死ぬのだろうかと私たちは冷や冷やしていた。しかし、死んだ二人とも貴族なので庶民的にはどうでもよくなっていた。 それよりも、マナとセナ。この二人はどうやら彼氏の事でもめているらしい。マナは切りつけたことも、少…

《歪な》運命 第7.5話「理解の差」sideカシュ

軍事部の仕事を昨日は早めに切り上げ、弟の現状というのを詳しく教えてもらった。──私は次男なのに魔法学院に通っていることには驚きはしなかったが、上位クラスなのにその立場が今危ういということに驚いた。一族の血を引いているのだから、成績はトップに…

《歪な》運命 第7話「堕落」sideマリア

5月中頃。自殺事件の1ヶ月後にあたるこの日、私はルシュに呼ばれ、自習室にいた。 本来ならば、いつものような楽しい週末を過ごすのだが、先週からルシュは自習ばかりしている。そのことが気にはなっていたけれども、どうして呼び出したりするのだろう。「…

《歪な》運命 第6.5話「秘密」sideアキナ

私はムアーナの秘密を探るべく、魔法学院を管理する学院管理部を訪れた。唯一機関の敷地外にある組織。アポイントメントは私ですら取りにくい。交渉にかなり時間がかかった。 出てきたのはここのトップとも呼べる長官だ。「ムアーナの履歴、ですか」 「はい…

《歪な》運命 第6話 「異常事態」sideユイ

4月の暮れ 貴族の娘の自殺というのは貴族クラスではかなり話題になり続けた。私達も例外ではない。 しかも、彼女の家柄は中途半端だった。兄の犯罪の有無以前に、家は王宮貴族でもなければ、諸侯貴族でもない、改革派貴族だった。 改革派貴族は二つの間にあ…

《歪な》運命 第5.5話「おかしな話」sideアキナ

昨日、案の定放置されていた自殺した女子生徒の部屋に入った。担任の語っていた優秀な生徒というのが本当ならば、整理整頓が行き届いているのがふつうだろう。 ところが、それとは真逆で、勉強道具だけはきちんと片づいていたのに、それ以外の物が雑多に置か…

《歪な》運命 第5話「縛り」sideミシェル

私はこの一週間、ずっと補講だらけの日々を送っていた。さすがに毎日補講はないけれども、それなりの成績が取れないため、課題がかなり出されていた。 おかげで部屋に戻っても課題ばかりで、あまり仲は深まっていない。 昨日だって補講があったから、二人と…

《歪な》運命 第4.5話「事件」side学院長

入学の儀から早一週間。既に庶民の下位クラスに属する数名を地方の学院に送った。全く……困ったものだ。 私は激務に疲れ、週末であるこの日、ついつい職員棟二階の森の近くにある休憩スペースで眠ってしまった。 すると、額にひんやりとした感触があった。思…

《歪な》運命 第4話「しあわせ」sideマリア

「あー、疲れた」 「本当、そうだよね」 あれから一週間。各学年は完全に分かれており、あまり上級生は見たことがない。だけれども、ふと、外に出ると、試練の森(四年生と五年生の棟と一年から三年の棟の間にある為こう呼ばれている)で休憩している先輩も…

《歪な》運命 第3.5話「取引」sideユイ

「あら、その顔……知らなかったみたいね」 「それはそうよ。だって彼女──」 「ナーシャ。黙って」 「ノア! あなたも知っているはずよ! 彼女は、あの子だって」 「だからって嫌うの? ナーシャ、それはよしなさい」 「うっ」 ……二人とも私の過去を知っている…

《歪な》運命 第3話 「行動」sideミシェル

もうすぐお昼時。なのに、私のルームメイトはまだ見あたらない。 全く……。せっかくのお昼ご飯、一人になってしまうじゃないか。 私はお部屋から出て、寮の食堂へと向かった。ここは庶民の下位クラス専用で、私とマリアが今後会うことはないだろう。 寮自体は…

《歪な》運命 第2.5話「仲間」sideユイ

私は一人になったような気分だった。いくら一位になれたってうれしくもない。私の親族は全員機関の人間だから、また誤解されるだけだろう。だからといって、気を抜けば怒られてしまう。 私はミシェルとマリアが今は貴族ではないことを悲しく思った。両親曰く…

《歪な》運命 第2話「魔法学院の掟」sideマリア

早朝の臨時便に乗り、私とミシェル、そして私達の両親は入学式へと急いだ。今年の入学者は200名程と例年よりかなり少ないらしいが、途中で増えることもあるらしい。「久しぶりだわ。魔法学院」 「おお、本部に通われていたのか」 「ええ」 ミシェルの両親は…

《歪な》運命 第1.5話「機関」side.アキナ

今日はお祭りの日。浮かれた人々が国中から集まる、何ともつまらない日だ。 貴族の子供の大半はこの日、大概が祭りの中心地でもかなりお高いエリアである東地区に集まるものだ。そして、必ず犯罪が起こる。特に初日は、まだ学院の入学式前ということもあり、…

お知らせ

明日からこちらで毎日一つずつ小説を更新いたします。 今まで書きためていた小説を書こうかなあと思います。 改めて宜しくお願いします。 (ちなみに新しく作り直したのは、気分を変えるためです)

《歪な》運命 第1話「変化」side.マリア

ダレカノユメ────なぜ、私は称号を求めたのだろう。どうして、なんだろう。称号で、私は幸せになれたの? なれると思っていたの? 『そんなわけないよ』あなたに、そう言ってほしかったあなたに、止めてほしかったあなたに、殺してほしかった私は、報いを受…